兄さんさようなら

日本へ着く2日前に兄が他界した。 数年前からアルツハイマー病で、一人で出かけて近所で転倒した時から急速に老年痴呆が進んでいた。 大学を卒業後すぐ就職して、その会社で40数年を真面目に勤め上げ、実に平和で幸せな人生を、一男一女の子供とその孫と共に貫いた。 渡米してからはあまり多く会うことがなかったが、電話では互いの健在を確認しあっていた。 最近彼を訪ねたときは、しっかりと弟を覚えてくれていて、目で「大丈夫、大丈夫だよ」と話かけてくれながら力強く握ってくれた兄の手の温もりは今も忘れていない。 帰米する飛行機が一時間ほど遅れてこの夕陽を見ることになったが、沈んでいく日をこれほど淋しく空虚な気持ちで見るのは初めてのことだった。 息がとまり胸が痛くなる感覚でこみ上げてくる涙をこらえるのがやっとで、兄のいる日本からこのまま遠くへ去ってしまうのが苦しく思えた。
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[M9-P]
by Scottts | 2013-02-18 00:00 | SUMMILUX 35/1.4
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