女の大きなスーツケースを持った男が出てきてタクシーにそれを乗せ、後からきた彼女と別れの抱擁をした。 この二人はもう二度と会うこともないだろう。

そして男は見送ることもなく、車が走り出すときも振り向きもしないで家へ入ってドアを閉めた。 ...そう、それでいいんだ。

ここで未練がましく車が見えなくなるまで手を振って立っているとか、いわんや女の前で涙を拭うなんていうのは男ではない。 この別れの瞬間、彼女との数々の思い出が吹き出して目の周りが膨張し、喉や胸が張りさけそうになりながら何でもないようにスパッと装うのが男の流儀なんだ。
[R-D1s]