帰国日

朝早く目が覚めた。 窓を開けるとグレーの空にきれいなグラデーションの雲が横縞になってきちんと整列している。 涼しげな色だが風がないのだろう、気温は多少低くても蒸し暑い日になりそうだ。

部屋の窓から下を見ると迎賓館の緑がかった白っぽい屋根が周囲の広大な森の中に目立ち、20世紀初頭に建てられたネオ・バロック様式の姿がとても優雅に、時代を経た重みとともに佇んでる。 濃い緑の中に心なしか少しだけ黄色く色づいた木もあって、四季の移ろいを匂わせている。 日曜日というのに高速道路にはかなりの車が行き交い、早朝の静かな都会を激しく揺さぶり起こそうとしているようだ。 その向こうには茶色や白や黒のマンションが建ち並び、それぞれの部屋の窓がまるでコンピューターグラフィックスのドットのように無数に並んで見え、その先に迎賓館の森とつながるかのように明治神宮と新宿御苑の緑が黒っぽく逆コの字型を描いてビルの隙間を埋めている。 ここ36階から見渡すと視界の三分の二は緑が占めていて、大都会といえども乾いた感じはしない。 

視界の背景には西新宿の超高層ビル群があり尖塔があるドコモビルや都庁本庁舎、第二庁舎やパークタワー、コクーンタワーなど都会の偉容を誇るかのように堂々と立ちはだかっている。 そうこうしているうちに雲の隙間から陽が差してきて、この風景をまるで巨大なスポットライトで照らすように少しずつ明かりを移す様は、数時間後に発つ自分にゴージャスなステージを特別に演出して見せてくれているかのようで、ブラボーブラボーとつぶやいた。

今、上の記事をアップしてから特技の早業シャワーをした。 毎日夜ではなく朝する習慣だ。 湯船につかることはあまりない。 あれこれ考えていて今回2回目の失敗?はシャンプーで、シャワー室にはボディソープ、シャンプー、コンディショナーの小さなプラスティックの瓶が置いてあり、小さく名前は書いてあるがそれぞれホワイト、ピンク、グリーンと瓶の色分けで識別しやすいようにしている。 この色が問題なのだ。

いや考え事とはたわいのないことかも知れないが今回の夏の旅に、かき氷を食べれなかったことは痛恨の極みである。 ファミレスなどのレストランのかき氷は自分の思うかき氷ではない。 少し軒がゆがんで家の外に張られている木の壁は黒ずみ、中から蚊取り線香が匂う古い民家風の、駄菓子やのような家の軒先にかき氷の四角いのぼりが眠たげにゆらゆらとぶら下がっていなければならない。 近所から風鈴の音がすれば尚よい。 そして電動かき氷機なんて偽物ではなく氷のブロックを置いて上からがしっと押さえ、手でぐるぐる回すのでないといけない。 心地よいすかっすかっという音とともに氷の結晶がきれいに整列して落ちてくるのを、おばあちゃんが首にかけた手ぬぐいで汗をぬぐいながら緑色の花びらの形をしたビードロの小さな器にあふれんばかりのふっくらとしたかき氷をのせ、すこしゆがんだアルミのスプーンをざくっと氷の中程まで突きさした後、見るからに毒々しげな真っ赤なシロップを氷がほとんど染まるまでたっぷりかけたものでないといけない。 そして食べるときはスプーンを氷が崩れないようにうまく引き抜くのがこれまた至難の業で、うまくいったと思ってもスプーンの先が氷を離れるときに周りがこわれてパサッと幾ばくかの氷が下へ落ちてしまう、あの悔しさが次の挑戦を誓わすのだ。 つーんとこめかみを痛くしながら、最後の一滴までスプーンですくい、舌を思い切り突きだして真っ赤になったのを確認してにやりと満足する。

と、こんなことを思いながら手に取ったシャンプーはシャンプーでなくコンディショナーで、泡立たないことで気がつく。 自分にとってシャンプーはグリーンの瓶で、コンディショナーはピンクの方。 まあ匂いはいいから今日はこれでよしと、少し流しての省略洗髪だった。 おっと濡れた体が寒い寒い。
by scottts | 2010-09-19 07:41 | Japan
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