日曜の朝、ダウンタウンのフェアモントホテル内にあるザ ジョージアンでこれを食べて、今までとても美味しいと思っていたすべてのフレンチトーストはアマチュアのランクへ落ちてしまいました。 ちょんちょんとパンの表面にシナモンで香りを付け、バターをたっぷりのせてメープルシロップを少しかけ、そこに作り立てのまだほのかに温かいソフトなアップルジャムをポトンと乗せるんです。 そしてトーストを一口分切り別けフォークで口へ運ぶと、先ずシナモンの軽い匂いが食欲を刺激し、噛むやいなやカリッと表皮が控えめな音を立てました。その瞬間に濃厚なアイリッシュバターが舌にポトンと滑り落ち、はっと思った時には奥歯がパンの柔らかな中心部に達しました。 メープルシロップの野趣な甘みと特別仕立てのアップルジャムの清らかな酸味がバター味と瞬時に混ざり合って、舌上の味蕾だけではなく咽頭、喉頭そして軟口蓋まで広がった味覚が一気に口内を駆けめぐり、鼻腔をすり抜けるパンの香ばしさと相俟ってこの世のものとは思われない宇宙的なうまみが幾重にも押し寄せ、その大波が脳に達した時の感激は如何ばかりでありましょうか。 こみ上げてくる涙をこらえるのに必死で、、、冷たいフレッシュオレンジジュースで気をとりなおし、二口目を頬ばるまで少々時間を要したのです。

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