パイオニアスクエア(Pioneer Square)はシアトルの発祥の地だ。今でも19世紀後半に建てられたレンガ造りの建物が多く残っている。アートギャラリーやカフェ、レストランなどあっておしゃれなエリアだ。しかし少し外れると特に夜などは危険な地区でもある。これらが交わった独特な雰囲気が自分が思う「都会」を感じさせるのだろうか、写真をよく撮ることがあるプラタナス通りもここにある。
その「少し外れた」雨上がりのストリートを歩いていると、後ろからコツコツと靴の音を響かせた男がマリファナの匂いを残して追い越して行った。皮のハットに左肘は汚れ、少し生地がほつれている黒いコートを着てだらしなくバッグを手に提げていた。何となく彼を撮りたくなってカメラを構えた時、若い男が車道を小走りに駆け抜けたので咄嗟に右へ移動した。彼が(麻薬の入った)バッグを強奪するため振り向きざまにハットの男を銃撃する延長線にいないようにしたのだ。
近くのカフェに入って苦いエスプレッソを飲みながら、カメラのファインダーを覗き撮る一コマにストーリーを想像するといっても、もっとのどかな場面を選べないものかと新年早々思ったものだ。
[M Monochrom]